創立にあたって

学校運営機構株式会社

創設者 和田 公人

(学校法人八洲学園 理事長)

長年、通信制高校を運営してきて、いつも疑問に思っていることがありました。通信制高校には、高校を中退したり、転校してくる生徒さんが多数いらっしゃいます。その生徒さんを見ていても、学校を辞めさせられる理由は見当たりません。どうして学校を辞めなければならないのか、つねにその疑問が頭から離れませんでした。

学校って楽しいところのはず。学校って子どものためにある、子どもが安心して通える場所のはずだ。いつから、子どもを守れなくなったのか。

学校の先生は、子どもが好きで大いなる情熱を持って教師になった人です。それが、いつの間にか、本来の仕事以外に追われて、目標を見失っているのではないでしょうか。IT化、個人情報保護、モンスタペアレントなど、先生の仕事はいつの間にか増えている。その分、子どもに向き合う時間が減っているのでしょう。

そんな先生に子どもと十分に向き合う時間を持ってもらうためにこの会社を作りました。

先生でなくてもできる仕事をまとめて集中的に処理すれば、学校の運営はもっと効率的になるはず。効率化で生まれた時間を子どもに向ければ、学校はもっと楽しいところになる。学校を辞めざるを得ない子どもも減るはずです。

ここで、もう1つ疑問があります。そもそも学校って先生や職員だけで運営するものなのでしょうか。学校は地域のコミュニティの核として、保護者、地域の方、卒業生などみんなで運営するべきではないでしょうか。いや、確かそうだったはず。いつから、学校は社会から隔離されてしまったのでしょう。

これも、個人情報保護やモンスタペアレント問題と無関係ではありません。先生は忙しいので、社会との関係を構築する時間がとれない。関係の悪化を恐れて積極的に関わろうとしない、その結果、学校がすべてを抱え込んでしまい、ますます忙しくなる、そんな悪循環に陥っているのではないでしょうか。

そうだとすれば、学校と社会との間に入って、良好な関係を構築すればいい。学校の役に立ちたいと思っている保護者や卒業生はいっぱいいる。手伝って欲しいと思っている先生もいる。プロとして学校と社会を円滑に繋ぐのが当社の使命なのです。

ところで、学校の運営をなぜ、民間企業が? 当然の疑問だと思います。学校法人、財団法人、NPOなどの公益法人ではなく、あえて株式会社を選びました。それは、学校の運営にできるだけ多くの方に当事者として参加していただきたいからです。公益法人では役員でない限り、意思決定に参加する術はありません。しかし、株式会社であれば、株主になることで、会社法に守られた権利として意思決定に参加できます。

株式会社は営利を目的としていると思われていますが、それは株主が配当や一株あたりの資産の増加を望むからです。しかし、それだけが株式会社ではありません。株主がその持分に応じて意思決定に参加できる合理的な仕組みでもあります。株を手放すことで簡単に議決権を放棄できます。議決権の行使に伴なう責任は、出資した金額の範囲に限定されます。現行の法律においては、もっとも手軽かつ公平に組織の意思決定に参加できる方法ではないでしょうか。意思決定に参加することで、当事者意識が芽生え、積極的に関わるようになります。もちろん、特定の方の意見だけが強く反映されないように、一人当たりの持分は制限します。

学校を運営する会社を通して、学校の運営に積極的に関わるという新しい形を目指しています。

最後に、もっとも重要なことです。当社は教育は行いません。残念ながら、世界中が過去何百年も、より良い教育を求めて模索してきたにも関わらず、確固たる方法が確立されていません。いまのところ、教育には、1つの有効な方法というのは存在しないようです。一人ひとりの子どもに合わせて、学校ごとに自らが最適な方法を探すしかないのです。そのため、教育は、それぞれの学校が地域や学校の事情に合わせて行うべきだと考えています。

もちろん、教育方針を決定するために必要な情報提供や相談体制は整えていますが、当社が教育を担おうなどとは考えていません。当社よりもっとすばらしい教育の実践者が日本中にいらっしゃいます。その方たちのサポートが当社の使命です。

学校運営機構を創立する前に、「学校とは」にいて考えてみた文章は、こちらです。これが、第一歩と言えるかも知れません。